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那須別荘新築した体験談
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51. カーテン

カーテン
家の内装でカーテンほど悩むものはありません。占める面積も大きいし、選択を間違えば家全体の印象に大きく左右しかねません。
「カーテンは難しいですね。個人的には木製ブラインドの方が好きです。厚手のドレープなんかは嫌いです。印象が重くなりすぎる」
打ち合わせの席で円谷さんはそう言われました。なるほど、言われてみればその通り。カーテン選びは本当に難しい。

日本の一般家庭においてカーテンが使用され始めたのは、近代化が訪れた明治時代以降です。それまでは日本古来の、襖(ふすま)、障子(しょうじ)、衝立(ついたて)、屏風(びょうぶ)、すだれ等によってその役目が果たされていました。日本での装飾品としてのカーテンの歴史は浅く、そのためカーテンを使いこなしているとは言えないのが現状のようです。

家の中に長い布がダラリと吊り下がっている様子はそれだけで重苦しい雰囲気となります。また、シンプルな建築が好まれつつある傾向もあり、ますますカーテンは日本の住宅に馴染まないモノとなってきているようです。そして建築士には、窓に野暮な布など掛けて欲しくはなく、出来ればそのままオープンにしておきたいと考えるフシがあります。さらに、カーテンにはさまざまな化学物質が添加され、シックハウスの大きな原因のひとつにもなっています。室内空気を汚さないオーガニックコットンカーテンなどの提案もされつつありますが、まだまだ種類が豊富とは言えません。

“カーテンは存在が重い”。そう感じる人は意外と多いようで、特に新築物件などでは洋室にあえて障子やすだれを組み合わせたり、プリーツスクリーンやロールスクリーン、ブラインドなどを採用する人が増えつつあるようです。また、“カーテンをウッドポールに吊るす”というのも一時期は流行しましたが、もはやかなり重い感じです。もしカーテンレールが必要なら目立たないワイヤーレールを使うとか、そういったシンプルさがこれからは求められることでしょう。

カオリはできればカーテンを窓に付けたくないと思いました。そこで洋書や建築家の作品集などを調べてみたところ、やはり窓にはカーテンを付けないか、ごく目立たないブラインドを取り付けるか、もしくは初めから部屋の中に引き戸などを建築の一部として組み込み、夜はそれを閉めるということで対処している例が多いようでした。カオリは部屋の中に“建築の一部として扉を組み込む”というアイデアにとても強く惹かれましたが、“今さら無理よね”と思い、ブラインドなら代替案として採用できそうかな?と考えていました。

ところが、打ち合わせの席で円谷さんから、
「カーテンはやはり重いので、窓に部屋の中から引き戸を付けませんか?ちょっと障子をイメージしたようなデザインで。窓の上に幅木を付ければうまく吊れそうですし面白いですよ。パネルヒーターが邪魔なので床下に潜って位置を変更しましょう」
という提案がなされたのです。
「ええ!?すご過ぎる・・・」
カオリは思わず絶句してしまいました。円谷さんとカオリの感性がピッタリと重なったのはとても嬉しいのですが、すでに恐縮を通りこして目が点です。まるで新築しながら改築しているようなものです!結局、居間と洋間の掃き出しの窓は室内側からデザイン化された引き戸を取り付けることとなりました(全開にすると窓の両側にくるデザインです)。その他の窓はブラインドと、ごくシンプルなロールスクリーンです。カーテンはありません。

ブラインドはダイニングの掃き出し窓に取り付けますが、ウッドデッキに続くので木製ブラインドが良いということになりました。但し、普通の木製ブラインドは羽の厚みがあり、若干、重たい感じになります。そこで、竹製のブラインドに木を貼った特殊なブラインドを採用することになりそうです。

メーカーの思惑もあり、様々なカーテンが売られてきた昨今ですが、結局、一般の日本人はカーテンを使いこなすことができませんでした。今後はもし室内に生地を吊るすにしても、ヒダ付きのカーテンではなくて、好きな布をインテリア的に吊るすといった方法が主流になると思います。日本の障子なども改めて見直されるかも知れません。“シンプルで飽きのこないデザインが好き”。それは日本人が古来から持っている、自然なデザイン感覚なのです。

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